Julian Lage Torio@Cotton Club

12/9 1st set and 12/11 1st set

昨年彼のことを初めて知り、前作「アークライト」、そして数々のライブ動画を見て一瞬で惚れ込み、今年初頭に「モダン・ロア」を聞いて更にのめり込み、ずうっと事あるごとに彼のギターを聴き続けていました。そして漸く生で彼の演奏を聞く機会がやってきました。いやもう、こんなに楽しみにしていたライブはなかなかないです。

僕はジャズ畑の人間ではないのですが、彼が「アークライト」以降示しているアメリカーナの探求といいますか、古いアメリカの伝統音楽を咀嚼して提示していこうとするスタイルに惚れ込んでおりまして、そうですね、ライクーダーやビルフリーゼルに通じる匂いを感じていたんです。「モダン・ロア」はそのスタンスが遺憾無く発揮された傑作でありました。グラミーにノミネートされたのもさもありなん。

あとはなんといっても使用ギターがテレキャスターだということ。ジャズの世界でテレキャス使っている人はそんなに多くないと思うのですが(ビルフリーゼルはテレキャスですね。だから好きというのもあります)、「アークライト」以降の作品は録音もライブもほぼテレキャスのみ。それまでのジュリアンが好きな人のブログを見ると「ギターの使い方がわかってない」「早くフルアコ弾いて」なんて意見もちらほら見かけたのですが、すみません、僕は彼のテレキャスの音が死ぬほど好きです!!

多くの人が名演と呼ぶこの映像。使用ギターはfenderブラックガード。
こちらで使っているのはスペインのギターメーカーnachoguitarsのブラックガード。僕が見た回はいずれもこれ一本でした。
ジュリアンとビルの共演動画もありました!テレキャスの美しき共演….

さて、ライブの話に移ります。

僕が見たのは2日目の1stセットと最終日の1stセット。

2日目の1stは、個人的にアメリカーナというよりはジャズギタリストとしての彼の魅力が溢れ出る演奏だったと思います。「モダン・ロア」収録曲はどれも原型をほぼ留めず、その場のノリでどんどん姿が変わっていく。ジュリアンの柔軟さ、引き出しの多様さが爆発しており、「えっなんでこの曲でこんなコード進行になったりボイシングこんなになったりできるの?」という場面が次から次へと出てきました。

長年の盟友でもあるベースJorge Roeder、急遽召集されたドラムKenny Wollesen(「アークライト」でもドラムで参加していますから息はピッタリでした)も彼のギターに即座に反応したり、「こっちだよ」みたいな感じで誘っていたりと変幻自在の押し引きが三人の中で繰り広げられている様はもうただひたすら「うわぁ…」ってため息しか出てきませんでした….。 僕の耳では「えっ今どこやってんの?」「えっなんかずれちゃってるんじゃないの?」くらいkennyがフリーに叩いてもばっちり戻ってきたりとか。

変わって最終日の1stセット。こちらでは2日目よりもアメリカーナ色が強くなった印象を受けました。曲目に変更があったのも一因かもしれませんが、インプロ全開(変幻自在ではあるのですが)というよりも曲のムードをキープしつつその中で遊ぶ、というか。ジュリアンのプレイも心持ち「モダン・ロア」の雰囲気を踏襲している感もありました。僕としてはこの日のプレイが正に聴きたかった感じだったのですが、まぁメンバーからしてみれば「その場の雰囲気で自由に流れていった結果だよ」ってニヤリとするんでしょうね。

要するにこちらの思惑など軽く飛び越えたレベルでプレイしているわけで、ジュリアンレイジトリオの懐の深さ、広さをこれでもかと堪能できたという意味で2日間行けて本当によかったなぁと感じました。いや、もっともっと見に行けば良かったと後悔しきりでした….。

で、ギターの話です。

アンプはfenderのデラックスリバーブ。特にビンテージという訳ではなさそう。22wと小出力ですが音量的には十分でした。ジュリアンはノーマルチャンネルを使っていて、トレブル、ベースはフルテンではないものの結構開けていた感じがします。

エフェクターは足元ではなくアンプ前に置かれていました。本番踏んだりすることもなかったです。音色変化用というよりはギターの基本的なトーンを作るために必要なものが繋がっている、ということなんでしょう。恐らくですが右からTC ELECTRONICS Polytune2 noirJHS Pedal Morning GloryLee Jackson BIG1 PreampStrymon FLINT

Polytuneはチューナーですからまぁいいとして、Morning GloryとBIG1の住み分けはどんな感じなんでしょうかね….。写真を見るとBIG1は点灯していないようなので、Morning Gloryをクリーンブースター的に使って、もしがつんと行きたい時はBIG1を踏む、みたいなイメージなんでしょうか。FLINTは前からリバーブ機能だけ使っているようです。なので基本的にはブースター一発かました状態でアンプをプッシュしておいて、あとはもうギターのボリュームと右手のタッチだけで全てコントロールしている、ということですよね。いやはや、それであの音が出てきちゃうのか…..。

ギターは前述のNachocaster。ブラックガードレプリカとしては最高峰。ライブ動画などを見るとリアを使っていることが多く、その音が本当に艶やかでうっとりしてしまうのですが、僕が見た回では殆どフロントのようでした。2日目に2曲くらいリアを使っている曲があって、なんというかフロントと変わらない太さなんだけどリア特有のぐりっとする部分もはっきりあって。なんでリアでこんなに太い音出るんだろうと惚れ惚れしてしまいました。テレ使いにとってリアピックアップを使いこなすのは永遠の憧れなんですよね….。

パフォーマンスも小気味よくて、ポーンとタッピングでハーモニクス出す時やガツンとカッティングする時のジェスチャーがギターヒーロー然としててカッコイイ!!そういうのすごく大事実は。あと曲中で「ううーん」とか「おーう」とかいっぱい声出してるですよねぇ。ベースJorge Roederも「おーいえー」とか言ってるし。そういう楽しそうにやってる所も良かったです。

あとジュリアンいっつもニコニコしてて。そして指板全く見ない。なんでそれであのフレーズ?って思っちゃってもう笑うしかなかったです。多分そういう人たくさんいたと思う。一体どれだけ練習したらああなれるんだろう。

客層は圧倒的に男。おじさん多め。でも昨日僕の前に座った青年はとても真面目そうな感じで、ジャズ研か音大かなのかなぁ、20代だと思うんだけど、食い入るようにステージを見つめていて「あぁ、いいなぁ、頑張ってほしいなぁ」って思いました(彼がギター弾いているかはわかんないですがなんか勝手にそう思ってしまった)。その一方で帰りのクローク待ちで僕の後ろから女子2男1の声で「なんか全然知らないでふらっとチケット取って初めて来たけど面白かったですね、お料理も美味しかったし、ここ今度貸切パーティで使ってみます?」なんてのが聞こえてきてあぁそういう人もいるのね、でも面白いと思ってくれてよかった、今度は音源も聞いてみてね、と思ったり。

ともあれ、ここ数年ずっと焦がれていたあのギターの音を存分に堪能できて大満足でした。

テレキャスター、やっぱり最高のギターです。